Q&A

ブラック企業被害対策弁護団に多く寄せられる質問について答えてみました。


Q 残業が多く、また上司からしつこく叱責されるので、仕事を辞めたいと考えています。ただ、会社では人が不足しているため辞めさせてもらえそうにないのですが、どのようにしたら退職させてもらえるのでしょうか。 

 

A 雇用契約の期間が定められていない人、雇用契約の期間を定めていてもそれが1年以上で、働き始めてから1年以上経過している人は、原則として、いつでも会社に退職の意思を伝えることができます。そして、退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば退職できます。

  一方、雇用契約の期間を1年未満と定めた契約の期間中の人や、1年以上の雇用期間を定めていても初日から1年未満しか経過していない人は、「やむをえない理由」がなければ退職することはできないとされています。

  もっとも、会社の職場環境の悪いことが退職理由であれば、「やむを得ない理由」が認められると思います。また、この場合、会社が、期間途中で退職した者に対し、損害賠償を請求すると言ってくるかもしれませんが、そもそも損害賠償を請求するには、労働者に過失がなければならないとされ、かつ、退職することで会社に具体的な損害が発生していることが必要になります。多くの場合、そのような状況は考えにくいですので、あまり心配する必要はありません。

 


Q 私は入社時に「残業代出せませんよ。それでもよいかな。」と言われたのを聞いた上で会社に入社しました。毎日,朝9時から夜  11時まで働き,休日のはずの土日も両方休めることはありませ ん。入社時にはここまで働かされるとは考えておらず,残業代がな  いとは聞いていましたが,会社に残業代を払ってほしいと言いまし た。そうしたら,「誤解がありますね。うちは基本給の中に残業代  を含ませているので,残業代はきちんと払っています。」と言われ ました。この場合,諦めるしかないのでしょうか。

 

A まず,労働時間は原則として1日8時間,1週40時間を超えて はならない,また,休日も原則として週1日以上確保しなければな  らないと法律で定められています。

    そして,これを超えて労働者を働かせた場合,使用者は労働者に 対して割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。相談者の  ように入社当時に残業代を払わないことに納得して契約しても,そ の部分は法律違反で無効となりますので,残業代は請求できます。

    次に,基本給の中に残業代を含ませることが許されるのは,基本 給のうち残業代がいくらであるのか明確に区別できる場合だけで  す。会社が残業代の金額を明らかにできない,また残業代の計算方 法について定めた労基法37条に違反した金額を述べたときは,会  社の主張は許されません。

    このように相談者の方が残業代を請求できる可能性は十分にあり ますが,残業代請求の時効は2年であり,これを過ぎれば残業代を  請求することはできません。そのため,早期に,労働基準監督署, 弁護士に相談することをお勧めします。


 Q  職場が忙しく,有給休暇をとりたくても実際にはほとんど休めません。どうしたらいいでしょう?

 

A  労働基準法上,①6か月以上働き続け,②勤務日数の80%以上出勤すれば,年に10日の有給休暇を取得できるとされています。

 取得できる日数は,長く働き続けるほど多くなり,最大で20日の有給休暇を取得することができます。週30時間以上,週5日以上 働いているパートタイム労働者の場合も同様です。

    また,有給休暇を取得することに理由はいりません。会社が「仕事が回らない」等と言って有給休暇の取得を認めないことがあります。会社には,申し出のあった有給休暇の取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」には,その申し出を認めず,別の日に変更することが認められています(時季変更権)。これが認められるかどうかは,様々な事情を考慮して判断されますが,たんに職場が忙しいといって会社が有給休暇を取得できるよう何も努力していない場合には,会社が有給休暇の取得を拒否することは認められないでしょう。

    会社が正当な理由なく有給休暇を 使わせないということは違法ですので,労働基準監督署や弁護士に相談して下さい。